暮れなずむ恋の坂みち
りゅうのあくび

はす向かいから
零れ落ちる夕陽が
暮れなずむ坂みちの
眩しい道のりに
差し込んでいて
初秋の太陽に
焼かれた自転車は
夕焼けにすっかり染められて
たったひとつの恋を
こいでゆく

ハンドルを思いっきり握って
帰りみちを登りきる
車輪をつなぐ鎖の回転は
平凡な日の終わりと
始まりみたいに
今の恋が巡るよう
ゆっくりと坂道を
こいでゆく

すでに背中へと迫る夜空は
紺色に染まって
星の微かな灯りからそれるようにして
太陽は夕空を照らして
陽射しは暖かく
車輪のペダルをこいで
一本しかない帰りの坂道を
しっかりと登り
こいでゆく

坂道の途中で
自転車を走らせる
車輪をつなぐ絆のような
愛をふと祈りながら
向かい風でも片想いは
鮮やかな夕焼けに彩られ
もっと前方に向かって
幾つかの恋する丘を越えては
こいでゆく

少しも離れずに
車輪の轍から伸びる
夕陽の永い影を
踏み込むようにして
ひとつしかない恋を
こいでゆく

遠く永い道が
ずっと続く恋の途中
そっと明日の方角へと
架かる橋に向かって
ぐっと強くしなやかに
こいでゆく

もうひとつ坂みちを登ったら
河を渡るアーチ橋が見えてくる
ちょうど夕陽が
薄紅に染まるときの
暮れなずむ夕空は
きらりと橙色に耀いて
胸の奥が切ない
恋する河の流れのうえを
未来に架かる橋の向こうへと
こいでゆく


自由詩 暮れなずむ恋の坂みち Copyright りゅうのあくび 2015-08-26 04:47:49
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