薄っぺら
アンテ


夜の公園は
虫の声しかなくて
やたら大げさなブランコの音が
理由も訊かずに付き合ってくれる親友
みたいで嬉しくて
でも
ずっとこいでいると
息が苦しくなる

なんにもない一日
薄っぺらい毎日
昨日と今日
の区別がつかなくなって
もうどれくらいたっただろう
昼のあいだ
のことが曖昧で
夜のあいだ
のことだけ考えていたいと思う

窓ガラスの向こう
街明かりが流れていく
アクセルを踏み込む
トンネルを通り抜けるあいだだけ
オレンジに染まった風景が
リアルで
でもすぐに
闇に逆戻りする

行き場がない
って思ってた
どこへ行っても同じ
ってことにした
夜の街は気持ちが安らぐ
ビルや人や
電柱や看板が
塗りつぶされて
輪郭が曖昧な闇のなかにいると
まだ大丈夫だって思える
ビルや街灯の明かりにまぎれて
あちらこちらに灯った
ネオンライトの原色
点滅をくり返したり
ぷつっと途切れて
でも
残像が
いつまでも漂っていて

ずっと
ブランコをこいでいたかった
永遠に朝が来ない気がした
突然消えて
なくなればいいのに
って思うくせ
鎖をギュッと握りしめて

夜の街をさまよって
眠りとひきかえに
確かに
手に入れたもの
ひとつひとつは取るに足りない
薄っぺらななにかだけけど
欠片たちが
折り重なって
ブランコみたいな音を立てる

空が
色を取りもどしていく
また
朝が来る


「Poison」 #22
inspired by ぽわん 「ゆうぇす感」



自由詩 薄っぺら Copyright アンテ 2015-08-26 03:49:53
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Poison