粒子(たまし)は天空を飛翔する
南無一



天空から降り注ぐ粒子のあられ
α<アルファ>
β<ベーター>
γ<ガンマー>
三重奏の掠れた旋律は
我が肉体を透過したのち
真空の箱に充ちることはない

ブラインドされた虚ろな瞳には
粒子たちの闇雲の飛翔を
追うことはできないように
切り立った断崖に佇む者にさえ
終焉を観ることはできない

去っていこうとする者も
留まる者も
有限の箱を携えている
壮麗に飾られた箱の中身が
たとえ空っぽでも
有機化合物の燃焼の果てに残る
炭酸カルシウムの灰に捧げられる祈りを
虚無だと
誰が言えるのか

爛れた皮鮮の背を掻き毟る伸びた爪は
鮮血のマニキュアで染められている
しかし 冷えた灰に
色彩が宿ることはない

モノトーンの天空に
燃焼の果ての煙がたちのぼる
原子の粒子
α<あるふぁ>
β<べえたぁ>
γ<がんまぁ>
とともに 三位一体の塊となった
一筋の光子を生成することができるのは
百万分の一の確率

燃焼の灼熱さえ
有機化合物の干乾びた額には
汗をもたらさない
白けた灰に澱風菌は生えない
この夏の記録的な猛暑さえ過ぎてしまえば
やがて一時の安眠が待っている





自由詩 粒子(たまし)は天空を飛翔する Copyright 南無一 2015-08-25 19:39:04
notebook Home 戻る