覗き込む
藤鈴呼



苦しいだけよりは
少しばかりの笑顔で 取り繕うと
あなたは 眉を 動かす

連動するように
ワタクシの 唇が
歪な角度で Uの字を 描く

ここから出してと
叫んで いるのね
声には 出せぬ 
言葉が 響く

かきむしった 痕も
この 蒸し暑さでは
汗疹と 同化しそうに
思えた

管の後が 不愉快で
引きちぎろうとする あなたの脳裏には
かつての 想い人が
映って いるのでしょう

薄汚れた 湖に
くっきりと 浮かぶ
あの日の 二つの影
そして オール

たゆたう 時の流れは
二人を 
一体 どこまで
乗せて いくのだろう

少しの 違和感と
決定的な 拒絶反応

それが あなたの
決意表明ならば
甘んじて 受け入れよう
甘んじて 受け留めよう

横顔に 涙を流して
正面に 向き直った 刹那
笑おう
思い切り

もう 次の 笑顔には
出会えぬのかも
知れないのですから

ゆっくりと 覗き込む
様子を 伺うように
そう ゆっくりと

白衣の 衣擦れと
芳しいほどの 花びらが
そっと 揺れる

ひらり
その音が
あなたにも
聞こえましたか

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自由詩 覗き込む Copyright 藤鈴呼 2015-08-25 18:11:46
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