おじさんの伝説
そらの珊瑚

酒の自動販売機の前で
近所のおじさんは
ワンカップのボタンを押す

がたたん

おじさんは
しゃがみこむ

しばらくして
立ち上がったおじさんの手にあるのは
完全に飲み干され
空になったガラスのカップ
傍らに置かれたゴミ箱に捨てる

からん

気が向けば
――たとえば、てやんでえ、と毒づく気分でない時
――たとえば、青空を呪う気分でもない時
ひとりの家にそれを持ち帰り
道々で摘んだ野草を入れて
手向ける日もあるという

ことん


自由詩 おじさんの伝説 Copyright そらの珊瑚 2015-08-25 09:25:26
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