楕円を描く雨
由木名緒美

かなしい雨
細糸の雫を見つめる双生の水晶体
いつか止むのだろうか
あの鈴の音が空へ駆け上がったなら
乾きは喉に集約され
無上の必然を照らし出す
許されること その贖罪を見据えなければ
無数のあらゆる恩恵は
光を失った蛍のように
帰るべき瀬を見失ってしまうのだろう

雨は降る
幾億の静止した慈悲となって
名も知らぬ彼の背を染め上げる
それが世界の意志であることを知るまでは
きっとそう遠くない未来
数多あまたの命を灯すさなぎであったことを
あなたが告解される朝に
ただ認知されない無音の夜を
存在のゆるやかな包括として
この世界の凹凸を庇うのだ

背丈の等しい葉波のように
個が水平を描く時
地平線に昇る太陽が
水滴を抱くように蒸発させるまでは


自由詩 楕円を描く雨 Copyright 由木名緒美 2015-08-23 23:29:56
notebook Home 戻る  過去 未来