おしまい
アンテ


駅からアパートまで
の道すがら
晩ごはんの買い物して
ディスカウントを覗いて
そういえばストーブ
冬までには買わなくちゃ
1DKだから小さいので十分
って
気がつくと
また考えている
もうもどれない部屋
終わってしまった時間

ひとりっきりの家
逆向きの電車に乗って
快速で二駅

居酒屋と称して
コンビニのビニール袋片手に
日の暮れた公園
ベンチに並んで
缶酎ハイと百円おつまみで
いい気分になって
帰ったら
お風呂の順序を譲り合った
コンロの火
付けっ放しにしとけば
寒くねーよって
先入れよって

階段をのぼって
ふたつ目の柱のとなりに並んで
普通電車で五つ目
駅に着いたら
ちょうど前の改札を抜けて
徒歩八分
の道を
何度歩いて帰っただろう
もう二度とない
永遠にない

お金はなかったけど
たくさんの思い出がつまった
二人のアパート
大切な時間
だって思っていたのは
わたしだけのかな
簡単に壊れて
はじけて消えた
あの娘のこと気づかないフリ
していれば
もう少し上手に騙されていれば
今も続いてたのかな
だって
あんなに楽しい
奇跡みたいな時間

もうたくさん
だなんて

向かい側
あの駅行きのホームは
遠くて
その先には
もう
なにもない
おしまい

普通電車がホームに滑り込む
ドアが開いて
閉じて
あの駅へ走り出す


「Poison」 #21
inspired by ぽわん 「駒場東大前」



自由詩 おしまい Copyright アンテ 2015-08-20 23:49:17
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