ちん切り J子の夏
末下りょう


女を寝取られた男が、嫉妬にかられて寝取った男のちんこを
枝切りばさみでちょん切ってトイレに流すなんてのは
まったく話にならない。
下品な雄ブタの発作だ。


J子はアイスキャンディーを舐めながら
呆れた


ちん切りは
好きなちんこだけだ

嫌いなちんこ切ってどうする。
ましてやホモでもないヤローがヤローのちんこ切ってどうする。
センスのかけらもない。


元ボクサーだか法学部の学生だか知らないが
引っ込んでろ。


J子はあべさだもきらいだ。
駆け落ちとか首締めプレイとか、要らない。
ぜんぜん要らない。


ちんこはもっとシンプルに切れる


ハサミや包丁は使わない。かさむから要らない。
小動物のように、素早く、噛み切り、
飲み込む


これはカニバリズムではない。SM、MBE、EO、宗教、復讐、刑罰、
職業、プレゼント、これらによるちんこの切断を
J子は認めない。


スキャンダルはあるが魅惑はない


慎め、無作法だ。同意を求めるな。
ただ好きなちんこが切れる、それだけだ。
ちんこ羨望? 古臭くてうるさい。



J子はアイスキャンディーを陽射しにかざして溶かす
何にでも裏があるなんて人間の病気だ。
治ることのない病いだ。


J子にはいま確固とした肉体があり、
うまれながらの愛情がある


J子がいつ好きなちんこを切るかは誰もしらない
J子にもそれはわからない



水色のアイスキャンディーが
J子の指先を甘く濡らす
おなかがひえて、ぐるぐるとなる



自由詩 ちん切り J子の夏 Copyright 末下りょう 2015-08-14 21:51:32
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