真昼 みさき
木立 悟
骨のような岩壁をくり抜き
むらさきの斎場が作られていた
川底には黒い鉱がつづき
岩を二重に映していた
うれしさはすぐに悲しさになり
頭のなかには茎がひろがる
葉と葉のはざま
光の無い星にも
生きものは居て空を見つめる
窓の奥の灯
硝子の目
化石の壁が
海と街を隔てている
止むことのない波の音が
生きものの音と混じり合う
現実と何も変わらない夢
思い出せない夜と夕べ
現実以前の現実を
夢のように忘れてしまう
ひとつの指より近いまたたき
斎場の上の崖から海へ
人工の風が飛び降りてゆく
真昼は夜を褒美にもらい
曇のなかにしまい込む
出たり入ったりしながら
葉と星は話している
頭の上の風を撫でながら
川が流せないでいる
もうひとつのむらさきを見つめながら