舟に乗って川を渡る。きれいじゃない水に腕を浸して、汚れたワン
ピースのすそから、小麦色の脚をのばしている、太陽もない、だれ
もこない、きみが舵をとったくせに、行方不明なんておかしい
きみの宝物はなに。
危うさが私の宝物だった。
やがて岸が見えなくなって
あんなにうるさかった喝采もいまは恋しい
べとつく海風がぼくたちを運ぶ、港町の沖合いまで
舟に乗って川を渡る。きれいじゃない水に腕を浸して、髪も濡らし
て、おでこに付いた泥を、拭ってやると笑うから、まぶしい、湯気
を放つように明度を上げていく、小さい体を抱いている
宝箱をひっくりかえして目をつぶした
こんなものいらないよときみは
話し声
光
かわりはてた明るみのなかで、まだやわらかい、幼い死体があって、
女の子で、桜貝みたいな爪に土、こわくなって逃げた、ぼくは、ぼ
くが殺したわけじゃない、撲って、絞めて、そんな恐ろしいこと
朝食の時間だった。たべられる魚は泳いでいなかった。きみの肌と
おなじ色をした果物を齧って、図書室から盗んできた本を紐解く、
悪いことをすれば物語になれるというのは師の教えでした
きらきらの瞳
だけどきみが輝かせているわけじゃない瞳
血と水と偶然の効果
それだけ
他人だけがきみの味方
さわやかな言葉がただの旅をかざっていく
かつて宝石だった光を空に返して
やっぱりふたつの目はかがやく
ジュール・ヴェルヌの小説みたいです。冒険は終わらない、何度で
もめくられて、匂いのない、ただの古い紙になってしまっても、秘
密はずっとそこにあって、ばれないように震えている、風に舞って、
太陽が顔をだす!