腐った息
南無一



酸素吸入器に 繋がれて
あなたは、
二週間 生きました。

酸素吸入器に 動かされて
胸いっぱいの 息をして
かつて こんなにも 深く長く
呼吸したことはなかったと
思われるほど
深く 長い 息をして

その息は
玉子が腐ったような匂いをたて
わたしは 息を止めたほどでした。

   あんな 腐った息をして
   わたしも 死んでいくのかしら?

父の齢まで生きろ と言ったのに
あなたは 四十九で 死にました。

わたしは あなたが逝った齢よりも
もう 五年も長く 生きました。




自由詩 腐った息 Copyright 南無一 2015-08-06 22:11:56
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