淀川長治に憧れて(1)
末下りょう
とは言え、映画評論なんてものには到底なりえない映画感想文。
薄氷の殺人 (監督)ディアオ.イーナン
2014年
中国/台湾
レンタルDVDで鑑賞。薄氷の殺人、この作品がベルリン国際映画祭グランプリ&主演男優賞をW受賞してたことは知ってたけど、それが動機で観ようと思ったわけでなく、動機は別、まあ比較的フラットな気持ちで入りました。へんな期待はせず。
そんでエンドロールのへんてこな歌謡曲を聴きながらしばらく放心。びびった。面白すぎだろ。これ。中国映画が一線越えてきたぞってなもんです。中国にもこんなフィルムメーカーが。。なんかウレシー。
映像のステレオタイプな方法的、手法的説明の手触りは現代中国社会の底流をマッピングするようなフィルムノワール。中国による中国の(異化)。多層的ファムファタル。ながまわしの緊張感とフェイント的カットのリアリズム、迷宮的カメラワーク、冷たく無関心なトーンコントラスト、暗示的な照明操作、点在するオフビートなギャグ、ミニマルな台詞、大胆な省略のメタファー、 演出的にいちばん凄いと思ったのは(キャストがダメな演技を誰一人としてやらかさない恐ろしさ)。そしてなにより大事なファクターは台湾の女優、ヒロインのグイ.ルンメイの美しさ。死ぬほど美しいっす。これが鑑賞の動機。正直、彼女を観るだけでも観る価値アリ。
物語の骨格は簡単にまとめちゃえば現代中国社会が抱える格差が生じさせる(雑さ)をさらに低分子化させたような(雑さ)がひきおこす事件をきっかけに(雑さ)にまみれた中国の田舎町をロケーションに一人の未亡人を軸に添えそこから染み拡がるもの、もしくはないはずのものを呼び込んでしまうその軸とその危うさをあくまでも丁寧なストーリーテリングと撮影技法を基盤に、有機的に、非推論的に編みあげたもの。いくつかの素材からあえてピックアップするとしたら、まず(予期せぬ地獄に普通の人はそれほど上手くツールを扱えない)ということと(朝食のお粥と肉まんが異様に美味しそうだけど、ねー)の二つ。他にも挙げ出したらキリがない凄いふところの作品です。
主演のリャオ.ファンは、劇中、体重の増減がかなりあり、外観的に観るとある程度メソッド演技法を採用しているのかと。どうでもいいっちゃどうでもいいがなんにしろさすがの存在感でした。DVD購入決定。
それでは次回また会いましょう。サヨナラッ サヨナラッ サヨナラッ 。