やわらかい場所に
末下りょう



やわらかな運命をゆらすちょうどいいおっぱいがぼくのにのうでをちょうどよくツンツンする。三丁目のおっぱいパブさんサヨウナラ。いろんなおっぱいをありがとう。お世話になりました。ペコリ。また、いや、もう来ることはないでしょう。なぜならディスイズデスティニー。部屋の時計はとまるのだ。うるさいクーラーの強風に薄手のノースリーブが小刻みに震え、an.anを穴があくほど読みふけるそのちょうどいいおっぱいに季節は迷いこみ、繰りかえすことなくポンッとよみがえる。やたら虫刺されのある足を床にパタパタさせるたびにちょうどいいおっぱいはやはり部屋の時計を止めてしまう。顔はイマイチだけどちょうどいいおっぱいだけを見つめたい。わたしの顔ちゃんと見て話してよってたまにケンカもするけど伏し目がちな乳首でそんなに見つめないでむしろもっと強く見つめかえしてぼくをはさんでちょうどいいおっぱいのコンビネーションで潰してくれまいか。いまは顔よりもちょうどいいおっぱいがほしい。顔はなんとなくかわいいかも?!くらいでいいからちょうどいいおっぱいとしあわせに暮らしたい。だってマジメな会話にホントを渇望するなんてバカげてるしありえない。ぼくはちょうどいいおっぱいより大切なものがあることをちょうどいいおっぱいのやわらかさから知ることができるかもしれないので。ちょうどいいおっぱいを揉みしだくことによってぼくが解き放たれそれとはべつのぼくが生まれ、そのべつのぼくがまたちょうどいいおっぱいをさらにはげしく揉みしだく。命を賭けるなにかをみつけていない者は生きる資格がないとキング牧師はスピーチしておりましたが、ぼくには命を賭けるととりあえず決めたちょうどいいおっぱいがある。布団叩きはやめられない、叩きすぎると松岡修造は言っておりましたが、ぼくはちょうどいいおっぱいを揉みすぎる。やめられない。なんどもなんどもそのやわらかさに足をとられてやはり部屋の時計は止まる。ちょうどいいおっぱいそのひと揉みひと揉みが目的そのもののように優しくゆれ、ときに激しくゆれる。ぼくたちがいちばんよく知っていることはなにか。くっついてはなれること。なによりも中身じゃなくちょうどいい容れものをさきにつくること。そうやってあとから来るであろう誰かのためにちょうどいいおっぱいをぼくはきょうも揉みしだくのだから。食う。練る。遊ぶ。たまに寝る。ちょうどいいくらいのやわらかい場所には死体がいっぱい埋まってる。



自由詩 やわらかい場所に Copyright 末下りょう 2015-08-06 08:17:08
notebook Home 戻る  過去 未来