エスキース
草野大悟2

蜘蛛が
雨糸をゆらすと、
針の穴ほどの
光たちが
きらきら
とけあい、
うっすらと
午前十時五十分の星座が
あらわれる。

めざめている
、という夢をみていて
にげおくれた妖精が、
かげをふまれ、
うつつ(現)、と
よばれるようになったとき、
糸のまんなかで
はりつけになっていた太陽のむくろが
背中をわって
きみの、「 今」、をうんだ。

涼やかなうすい翼は
かがやきをなくし
骨のような空をさまよいつづけ、
風をよぶ声は
あおくひかるあしあとになって
雪原にのこされていたけれど。


自由詩 エスキース Copyright 草野大悟2 2015-08-02 23:07:40
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