星明かり
noman

かすかな圧力の記憶が
背筋を降りて
冷たい床へ逃げていく
せめてそこに
ある景色を描写する声が
あったと思うことにしよう
もう何年も前から
窓は一つだけだった
表面はざらついていて撫でると
優しい歌のような
音がした
匂いはなかったが想像で補った
窓の向こうに小さな
船が見えたり
隠れたりして
いた

満月に近い月が
上ったまま沈まず
いつまでも薄明るい夜
真新しいアスファルトの
上を
タイヤは回り
控えめな咳払いとともに
予測された未来は
象牙色に霞んでいった


自由詩 星明かり Copyright noman 2015-07-26 22:12:24
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