「アベ政治を許さない」ってそもそも日本語がおかしい
亜樹

 「アベ政治を許さない」ってそもそも日本語がおかしい、と思う。
 アベ政治ってなんなのだ。安倍首相個人のことなのか。政策のことなのか。自民党全体のことのなのか。それとも今回の強行採決を指すのか。
 そもそもなんで「アベ」なのか。漢字で書けばいいじゃないか、とか。どうでもいいことをつらつらと考えてしまう、日曜の朝である。

 そんな時思い出すのは、昨年亡くなった、神風特攻志願兵だった祖父のことである。
 満州に産まれ、日本軍の戦闘機が敵機を殲滅する様子に感銘を受けた祖父は、16の時に特攻隊に志願したという。けれども戦闘機に乗り込む前に終戦を迎え、祖父は靖国に祀られることなく、卒寿を迎え、ガンで死んだ。
 いつだったか、北朝鮮のニュースを一緒に観たとき、祖父はぽつりと「日本はこんなんじゃなかったなぁ」と言った。
 祖父は自分の意思で特攻に志願したし、今でも何か起これば国のために死にたい、ということをもごもごと話した。
 テレビのコメンテーターは「戦時中の日本もこんな風だったってうちの祖父が言っていました」といい、そうして別のニュースへと移って行った。

 過度な賛美をする気はないし、戦争がしたいとも思っていないけれど、現代の感覚で戦時中の全てをまとめて美しく悲惨な悲劇だったと報道してほしくないし、それを反戦や政治批判の材料にしてほしくはない、とも思う。

 そんな日曜の朝である。







散文(批評随筆小説等) 「アベ政治を許さない」ってそもそも日本語がおかしい Copyright 亜樹 2015-07-19 10:58:18
notebook Home