静かな午後に
藤原絵理子



風だけが 通り過ぎていった 
時計は止まったまま ベッドの上に
白い部屋の窓辺に 深紅の薔薇が
赤い影を落とす 花瓶の陰で


黒猫が身を伏せて 狙っている午後
死んだ蜂の羽が虹色に光る じっとして
触角は安らかに曲がって 中途半端に宙へ 
光の反射に猫の目は ふてぶてしく細くなる


ふと気まぐれに風が 蜂の体を転がす
猫は跳びかかる しなやかに
止まっていた時計が 動き始める


柔らかい肉球に 踏み潰されて
きらきら光る破片になる ますます虹色に
猫はあくびをして するりと窓の外へ生きていく


自由詩 静かな午後に Copyright 藤原絵理子 2015-07-17 21:09:14
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