しゃく・なげ子さん
藤鈴呼



杓子定規には行かぬ出来事を吸い込んで
花びらは 大きく開き 空に染まる

微妙な空気感も 四方山話も 飲み込んで
幹は 太く 伸びて行くけれど
もう これ以上は 勘弁して下さいと
一瞬 苦しげな 表情が 浮かんだ

氷上の天使
表情筋の活用が 出来ぬ季節
強張る頬の理由を
冬に かこつけた

私の春は 何時やって来ますかと
白衣の先生に 尋ねれば
もう あなた はるですよ などと
頓珍漢な 回答ばかりが 押し返される

少しずつ 擦り寄る花びらが
おしくらまんじゅうを 繰り返す

間引いて下さい
幹だけじゃあ 足りないのです
わたくしに
もっと 光を

ゼニゴケも 杉苔も
そりゃあもう 愛おしい
最近は 苔玉なんて 可愛らしい姿を 作成するのが
ブームらしい

水門が 閉まる
ゆっくりと 締め出された船が
浮遊を 始める

初めまして
始めました
違いますよ
二度目ですよ
三度目ですか
何度目でしょうね

あなたに出会う度に
もう 何べんだって 悔し台詞を 呟いて
声にならぬ 心模様を
空に 映しながら 眺めた花が
そっと 揺れた

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自由詩 しゃく・なげ子さん Copyright 藤鈴呼 2015-07-17 02:21:29
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