白夜
nm6
ぼくたちはときに、ひややかな空をうっすらと着て夜闇の蛍光灯の照らす端で立ち止まる。「ん」とか声にならない音で喉をきしませて、まず見るのは足元の靴だ。重力がぼくをきちんと踏みしめているかどうか、裏側を感じる。そして段階的に目を上げ、その次に首をスタートさせ、いわゆる前方を通り過ぎてそのまま上方を向く。閉じる。鼻を吹き抜けるもので触覚と嗅覚とを確認したら、ゆっくりと頭の中で集中を泳がせる。いつのまにか訪れた頭痛と、波に乗ってやってきた焦燥とを、そのゆるやかな回転で慰める。
何のために、というようなことを
うっとりとフリーズする
ぶちまける夜にゆらゆ、らとして
ウサギ、ウサギと数えた
飛び飛びに暗がりの白が横切る
*
目は閉じたままだ。次は味覚をかすかに理解するために、暖かい舌をこの空に触れる。膨張する黒い青さに引っ張られてしまわないよう、すぐ頑なに唇を噛み込む。そうして、耳をふわりと開く。車の音が途切れるほどの深夜だ。連続する何かは決してどこからか押し寄せるわけでもなく、軽やかにぼくを包む。何もないということは、ないのだということを知る。何もないということは、ないのだということを知る。さあ、瞼が重たいことに気がつけば。ゆっくりと色づく世界が、ぼくたちをこの荒涼とした途方に留まらせる。
誰のせいで、というようなことで
やんわりとフリーズする
「あ、聞いたよ」
*
ぼくたちはときに、ひややかな空をうっすらと着る。ぶちまける夜にゆらゆ、らとして、暖かい舌をこの空に触れる。こんな時間に軽やかに飛び飛びに、暗がりの白が横切る。夜闇の蛍光灯の照らす端で立ち止まり、ウサギ、ウサギと数えたものは何だったか。うっとりとやんわりと輪郭を知れば、しばらくはつきぬけて諦めるんだよ。
星が見えて、街灯も見える。なんだか端のほうでぼくは駆られて、やがていつものように帰ろうと思う。