Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:
竹森
映画の隠し撮り
彼は
自分の仕事が嫌いだった
+
ある日
上映の最中
突然警告音が鳴り
画面が真っ白になった
彼と数人の観客は立ち上がり
じき座り直した
それも映画の演出の一つだった
+
ある日 彼は
退職届と引き換えに
綺麗な花を一輪
散らかった部屋に持ち込んだ
それを卓上に置けば
ようやく掃除をする気になるだろうという
安易な考えで
+
彼女は
可愛らしい服装が似合う
可愛らしい女の子だった
初めは
どこにでもいる女の子だと
思っていた
+
美しいものに相応しくあろうとする姿勢が
美しさの形の一つであるならば
人が美しくある為には
綺麗な花が一輪あるだけでいい
彼女はあるマンションの最上階に住んでいて
その部屋の窓にはカーテンが掛かっていなかった
代わりに洗濯物が青空の視線を遮っていた
洗濯するモチベーションになるでしょうと
呆れる彼に彼女は笑った
+
それから 手の甲と手の平
握り合うではなく
重ね合わせることから始まった二人は
たとえば
一匹の柴犬を飼えば
ポチという名前をつけて
たとえば
一匹の黒猫を飼えば
クロという名前をつけて
+
ちゃんとしたスーツ
ちゃんとした企業
寒くなる前に
きっと二人は
間に合っていた