Re:Re:
竹森


×××××××の身体を構成するパーツがバラ売りされていたら、果たして私はどれを選ぶのだろう。やはり頭部だろうか。いや、私はピンポイントに×××××××の腋を欲するのかもしれない。膣は欲さないかもしれないが肛門は欲するのかもしれない。私から隠されていながら、隠しようもなく野蛮で、どうしようもなく不潔な、しかし内臓以外のパーツ。私はやはり彼女の肛門に自分の鼻頭を挿しこみ呼吸するのだろうか。





私は選ばなかった。彼や彼女が選んだように選ばなかった。たとえば職業、婚約者、好きな色彩でさえ。
これから誰かの肉体によって満たされていく、道交う人々の肉体のそれぞれ。彼や彼女が持つ事情のそれなりなそれぞれ。キーボードを久しぶりに叩くせいかミスタッチが多い。といってもミスタッチは君たちには気付かれないのだが。





私は×××××××に殺されてみたい。それよりも私は×××××××のすべてを知りたい。×××××××の体臭、足の裏の匂い、服の匂い、下着の匂い、腋の匂い、髪の匂い、肛門の匂い、小便の匂い、内臓の匂い、脳みその匂い、心臓の匂い。ああ、匂いばかりだな。×××××××の匂いばかりだな私が欲しいのは。匂いを発するに足るだけの肉厚ばかりだな。肉厚と、声帯と、清純と、清潔な部屋と、清潔な布団。





写真の上からあなたの横顔を撫でていると、指紋が奇妙な紋様を描いて、まるで盲目の赤子らの叫喚さえ、この耳にまで届きそうだ。昨日までの今日。今日からの今日。窓はすっかり開け放たれている。
隣人にはこの文章は、耳障りなだけの、キーボードのパチパチと鳴る音でしかないのだろう。そう考えると私は救われたような気になり、そして救ったのは×××××××であり、選ばなかったのは選ばれたからであり、窓の向こう、電線が遮る青空を見遣る。





年月にして8年間、私は×××××××の肉体のみを食し続けてきた。×××××××はあの華奢な肉体で、私の肉体をこれだけの間養い続けてくれた。それはとても愛おしくもあり、どこか不気味でさえもあり、私はときどき×××××××でない何かを食しているような気さえしてしまう。それでも飴玉を目の前にちらつかされた人間のような単純さで、×××××××の×××××××を信じ続けた。それは年月にして8年間。目の前にちらつかされた飴玉を手に入れた人間がそうするように、私は×××××××から抜け落ちた髪の毛や剥がれ落ちた爪垢を舌の上で、先端で、転がし続けた。


自由詩 Re:Re: Copyright 竹森 2015-06-27 07:49:12
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