挽歌
……とある蛙

梅雨空の悲鳴
私の空はやけに立て付けが悪い
私は有無を言わさず空を閉じる
天国など空から見えるわけもなく
ただひたすら空は鈍色だ
君がどの辺(あたり)に上ってゆくのか
風が吹いている
ダダ漏れのシャワーのような雨が
風に吹かれ、スカートのように舞い上がり
雨粒もまき散らす
水から上がったばかりの小動物のように
雨粒は勝手気ままな方向に飛び散る

あるいは過ぎし日のスタンプ使用済みの郵便切手
封筒の中身はよくは知らない
が、そこには確かに中身がある
うまく封が切れずにそのまま震えている
発送前からやり直してくれ
きっとうまくやれるからさ
封筒の中にたくさん詰まった過去の言葉
その中で、私は見つける
変わった女の子の優しさを
言葉の中のどこからか
私をじっと見ている
優しい女の子の眼差しを

そして、あっという間に大人になった眼差しに
それは…あるいは医者か患者か
誰が恐怖で君を殺そうとするのか
「助けて」という言葉を前にして
私には何もできない
もはや私には何もできない!

ひびの入った心を抱え
隠れている恐ろしい事実と言葉に
病院の看護婦 両親の姿
「いつ家へ帰れるの」という問いかけに
どう衣替えしたらよいか 滲む汗を拭いながら
それを忘れるように言うのだ
「もう少しだよ、治ったら一緒にコーヒーを飲もう」
崩壊してしまった言葉を
担当医師が帰ってくるまでに
そっと呟く
つぶやく

封筒の言葉は散乱し、頭の中を錯乱し
ハンマーで打ち壊すでもなく
事実と言葉をたたきつけられた自分は
担当医にそれを修復してくれ」
と倒壊した言葉を差し出す。差し出す。
それから彼女は脳腫瘍で死ぬのだ
まるで目を閉じる部分が壊れた
西洋人形のような
無表情で
顎も落ち口が開いたまま
無表情で

葬送の手続きは機械的に進んでゆく
列車のダイヤのように決まり切った時間を食って
私とあなたが夢に見た結末とはほど遠い天井
あれから一月半の梅雨空
夢見た空とは程遠い鈍色の曇天
あなたの上がった空はこんな色ではないはずだ
こんな結末を誰が夢見たのか…
一緒に夢見るために生きてきたのに
つまり、それは、たくさんの言葉の中から
たくさんの…たくさんの事実の中から
散乱した部屋の中にあるたくさんの思い出たち
私はそんな思い出と抱えたまま
今日もまた
明日もまた
明後日もまた
その翌日もまた
生きてゆくのだろうよ

日常生活の中で



※この程度……っか俺


自由詩 挽歌 Copyright ……とある蛙 2015-06-24 05:11:25
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