うるさい静寂
あおば

                          150618


どこか静かなところでと誘われたのがとあるマンションの一室
確かに壁は厚く、窓は二重窓、衣擦れの音も煩いほどなのだ。
時は、梅雨寒の季節、エアコンは殆ど役に立たない。時代物の
除湿機がぶんぶん唸っている。彼を止めたら、じとじとする湿気が
部屋中を覆い、静かだけど、肌寒く、古傷や背中が痛くなる。
痛みの増幅は困り者
さっぱりした五月の空気を作り出す時代物の除湿機
煩いのが困りものではありますが、彼が居なくなったら
この部屋は地獄の一丁目となります
彼のおかげで私たちは仲が保てるのです
彼女のすっきりした顔が、真の静寂を好むのか好まないのか
誰にもわかりません
静寂は、環境音を気にならずに居られるところと
古来から決まっておりますぞ
岩に染み入る蝉の声
なんという静寂な表現
私の顔は赤ら顔
富士山の雪解け水で産湯につかり
それ以来赤ら顔になったといい聞かされて
数十年
静寂に慣れておりますが
真の静寂は耳鳴りが大きく聞こえたりして
返って煩いものと心得ております。
自然の中の静寂は、騒音計で測定すると
数十デシベルを超えたりして
少しも静かではありません。
それでも静かな環境といっても嘘ではありません。
打ち寄せる海の波
せせらぎの滝の音
木々のこすれる音
発火してパチパチ燃える森の木々
焼け野原を吹き渡る野分けの恨み顔
搔き分けるべきものを燃やした奴は
どこのどいつだ
亡霊のように吹き荒れる
聞き分けの無い低気圧には
つける薬も無いから
押しのけるとしようかと
高気圧
大空の中の密談を
こっそりと竜巻が地表に伝え
雷が警告音を鳴らす
梅雨明けが待たれる思いの
1DKの空き室の窓ガラス
オスプレイのプロペラで
カタカタガタガタ強請られて
すっかりがたがきた


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、クローバーさん。





自由詩 うるさい静寂 Copyright あおば 2015-06-19 22:34:10
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