salvage/創造

salvage /創造


体にチェーンを巻きつけて

その先に繋がったイカリを静かに海に沈める

重みに引っ張られて

冷たい海に投げ出される

ウェットスーツに 冷たい水が入り込んで胸が張り裂けそうになる

口から出る泡を海水から差した光が照らす

もっと深く より深く

そういい聞かせているうちに

光の届かないところにいて

さっきまで ほんの少しだけ聞こえていた地上の物音も聞こえなくなる

しばらく暗い深海に一人体を浮かべていると

光に照らされたものだけが真実ではなく

聴覚が捉えた振動だけが音ではないということに気づかされる



ほら目の前には地底に横たわる巨大なガレオン船

好奇心が恐怖心を上回った時

あなたは体を捻って船に近づき

船室のドアを勢いよく開ける

その時の物語を話すのは地上に出た後で

今はただ
誰にも見向きもされずに いじけてる難破船にワイヤーをかけて
引き上げるサルベージ

水面までの距離は思いがけず長く
いっそ放り投げてやろうかと
思うこともあるだろうけど
諦めないで

水面から髪を濡らしたあなたが満面の笑みを浮かべて飛び出る

僕はそれを遠い灯台から見下ろして思う
これでまた世界に 面白いものが一つ増えた...











自由詩 salvage/創造 Copyright  2015-06-17 18:36:54
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