君の不在
じぇいぞろ

もういない君のことばかり考える

借りたばかりのアパートの窓辺に座り
煙草を吸っていた君の横顔の向こうに
自死した夫への邂逅があっとととか

台所用品を百均で最低限揃えて
最初につくった晩御飯のこととか
ベッドがなくて寝袋で寝たこととか

ホークスの応援歌を覚えて
ボクが運転係で君がビールを4杯飲むこととか
帰りに長浜ラーメンを必ず食べたこととか

ボクが選んだスキーウェアがダサかったのに
キミは喜んでそれを着て、ニセコシェラトンに
泊まったこととか

別府の山の上にある青いプールみたいな温泉に
最後に混浴で入って夕焼けを見ながら泳いだこととか

ハードディスクの1TBあった君の
jpgファイルを消したあの晩
涙がとめどなく流れたこと

何故だか忘れなきゃと思うほど
jpgがaviになって
匂いや温度や空の色まで蘇る

君が持っていたボクの記憶は
白い灰になって
煙突から風に流されていったのに

脆い錯覚をセメントで固めている


自由詩 君の不在 Copyright じぇいぞろ 2015-06-13 11:24:55
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