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梓ゆい

粥を含んだ口元。
生きる事をかみ締めるかのように
ゆっくりと唇が動く。

とろとろに煮込んだ粥は味付けも無く
米の甘みが弱った体に優しい。

おわん半分に残した粥を下げたとき
父は眠りに落ちた。
カーテンを囲んだ白いベッドの上で。

(家に帰りたい、お茶を淹れようよ。羊羹を分厚く切って。)

寝息を聞きながら
父の肩に布団をかける。

トクニイジョウハナイヨ。
ヨホドツカレテイタンダネ・・・・。

「お父さん、早く家に帰ろうね。」

冷め切った粥は
水と共に排水溝へと流れてゆく。

早く帰ろうね。
早く帰ろうね。
早く帰ろうね。

「お父さん、早くお家に帰ろうね。」



自由詩 1/2 Copyright 梓ゆい 2015-06-02 03:02:11
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