バスストップ
たもつ



兄はまだ小学生相撲大会の賞状を
大事にしているだろうか、と
扁桃腺の手術後
縫合を忘れられたままの婿養子は
まだ考えているだろうか
ふとバス停に波は寄せて返し
沖に流されていく砂の数くらいは
ある日思い出すのかもしれない
時刻表に刻まれた沢山の名前
それはかつて産声を奪われた生命たちの痕跡
屈託なく笑う僕が映っている鏡は
昨日までにすべて叩き割っておいた
料金箱に破片を一つ落とそうとして
指を深く切った
初老の運転手は遥か遠く
よそ見をしている





自由詩 バスストップ Copyright たもつ 2005-02-09 19:18:00
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