蛾の夢
日々野いずる

この夢の世界には
なんでもあるのになんでもない
必ずしもそうであるわけではない
昼の夢を見ている

四角い空に囲まれた壁を登り
垣根に生えた綿毛を吹く
君にあてた手紙を紙飛行機で飛ばした
それは風に吹かれて僕の四角い空に落ちた

届かないはずの言葉の返事が返って来た
怖がった君は僕を寄せ付けないように
丸まり刺を出し身を守るという
血だらけになりながらも
隙間をぬって触れようとした
それもより鋭い刺で刺された
穴の空いた血のしたしる手

昼の夢を見ている蛾は
夜の蝶に似ている

それが君
君が蛾と気づかれないように
僕を手酷く扱った
そう気付いたのも年を重ねてだいぶたった頃だった

きらきらと鱗粉をまいていた
それに目を奪われ真実を見失った
君は正体を見破られるのを恐れ

ただ
それだけのこと





お題:綿帽子、昼の夢、文通、四角い空、アンハッピー、ハリネズミ


自由詩 蛾の夢 Copyright 日々野いずる 2015-05-22 06:40:54
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