林檎
瑞海



見知らぬ男に
いつかに刺された右脇腹
抜糸の痕と汗の匂い
蜃気楼を初めて見た夏
君がこの世に降り立った夏
今世紀最大の奇跡

真白で生まれた君
僕と同じ 驚愕した
右脇腹に抜糸の痕
おかしい
おかしいんだな
君はどこから来たんだろうね
母親の子宮の中
ほんとにそうなのだろうか

腕の中に君をしまって眺めていると
時間が止まったような気がする
僕と君だけの時間
世界が僕らを置き去りにする
時間の針が僕を通り抜けて
流れ出た血は
林檎になり
一口齧られたそれは
君に知恵をつけました

海にのまれて
全てを悟る夜は新月
君の眼もひらく時
体を光が蝕む

そうして
ひとつに
なりました
とさ



自由詩 林檎 Copyright 瑞海 2015-05-20 21:27:08
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