巨大な比喩
左屋百色

私は詩を書いているのではありません。あなたが読むまで詩ではないのです。風が吹いた。花が揺れた。
そんなことは詩ではないのです。あなたが読んだものだけが詩なのです。詩は日常にありません。日常に詩があるのです。地球より先に生まれた詩があるのです。永遠に誰も詩は書けないのです。詩人など存在しません。詩人ではない人も存在しません。詩だけがあるのです。あなたの詩など存在しません。詩があなたを書いたのです。陽が暮れた。雨が降った。詩はどこにもありません。どこにでも詩はあります。あなたは今まで詩を書いてはいないのです。
読んでもいないのです。夕方5時から6時頃に巨大な比喩に飲み込まれ詩を書いた気がしているのです。
私は詩を読んだことがありません。
書いたことも一度もありません。
風が吹いて花が揺れて陽が暮れて雨が降って家に帰って部屋に入らない巨大な比喩を砕いたら、それはもう
書く前に詩であった。読む前に詩であった。詩の中に私はいない。私の中に詩があった。私の詩は存在しない。詩は今日も詩であった。私は存在しないあなたの詩に興味はない。詩の中のあなたを見つける。見つけるために読む。私は死んだら比喩になる。詩にはならない。あなたは生きて下さい。私には優しさが足りません。私には書けない詩があなたにはあるのです。あなたには書けない詩が私にはあるのです。お互い既にあるのです。地球は巨大な比喩なのです。この世に詩は存在しない。あなたが生きて存在していることが詩なのです。死んだら巨大な比喩になりましょう。いつか誰かが誰かを詩にするでしょう。風が吹くから花が揺れるのではありません。花が咲いているから風を感じるのです。詩のように雨が降り比喩のような水たまりができる現代。雨が上がり虹が出たとします。あなたには虹を詩にすることはできません。虹があなたを描くのです。私はそれを知っています。あなたがどんな人かは関係ありません。私がどんな人かも関係ありません。あなたや私がどんな人でも虹は出る時は出るのです。あなたに個性はいりません。主張も必要ありません。虹があなたの個性を知っています。花があなたの主張を聞いています。あなたの比喩を私にください。私の比喩をあなたにあげます。まだ誰も詩を書いてはいないのです。


自由詩 巨大な比喩 Copyright 左屋百色 2015-05-18 12:34:56
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