君みみなれぬ口づけを
ただのみきや

箸でつまんで
ポトリ ポトリ
やわらかな壺へ
金色の毒虫入れ合うの
互いに舌を絡め
かたることば
海が見たい騒がしく
鳥が声が
眼裏掻っ切って
わたしたち手探りのままでいい
真新しい家の
日当たりの良い庭へきっと埋めるから
小さな大人の
ぶよぶよに膿んだ想い
忘れずに忘れられる
ふたり一つのパレットで絵具のよう
キャンドルが倒れたままの部屋で

オト喰らい燃ユル朝
海面に浮かび
はじける 夢の記憶

行進シテイル
反対シテイル
賛成シテイル
累々と
全てが煩わしく
朽ち果てて往く肉体の
隅々に引かれた
負の路線図から
風のような抑揚
真っ暗な地下鉄の響きが
咽深く
逆流する酸性の幻と紅い臓腑の焼印が
あの 甘味しつこく咀嚼する
唾液イト引く音節に
月足らずで産み落とす
翼ある殺意

ああ生皮剥ぐ愛を詩って下さい
ふたり刺し違える愛の詩を
この耳にしゃぶりついて欲しいのは
シニカケタケモノノウメキ
なりきれないことばの
ミダレタシセイ
反り返り
れて震える欲望の
大杯へと溺れて沈み
骨を抜かれて
すっかり透けて海月と果てて
泡と消え去る 
その刹那まで
君みみなれぬ口づけを
さもなくば
君シノタマウ事ナカレ


    
             《君みみなれぬ口づけを:2015年5月4日》








自由詩 君みみなれぬ口づけを Copyright ただのみきや 2015-05-12 22:49:23
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