ツブスナカレヤ
ただのみきや

時間を つぶすと言うのか
やっと生まれて来た この
小さな 幼気な時間をあえて
つぶす と言うのか

梱包材のつぶらな可愛いプチプチを
訳もなく指先でつまんで破裂させるように
このささやかな時間を
つぶす と言うのか

むかしベンダーショップでわざわざ百円払って
画面に整列した地球外生命体を
きゅんきゅん撃ち殺したように
訪れた時間を 害虫でも駆除するように
つぶす と言うのか

殺伐とした日常に
ひょっこり顔を出した無垢な時間を
まるでモグラたたきでもするように
名を奪い(暇)と記した麻袋を頭からすっぽり被せ
冷酷にハンマーを振り下し
親の仇でも打つような勢いで
つぶす と言うのか

クジラもイルカも大切だろう
二酸化炭素削減も大切かもしれないが
時間が一番大切だ
時間がなくてはなにもできないだろう

コウノトリが運んで来る時間
暇がこの手の中で産声を上げたなら
すぐにミルクを与えよう
ちゃんと手首で温度を確かめて
かわいい時間を抱っこして
ほっぺチューでちゅよー

そうしてベースを弾こう
お気に入りを検索してキーを探り
気ままにセッションしよう
本を読もう
新しい本もお気に入りの本も
詩集に小説みんな読もう
古本屋を巡ろう
図書館に行こう
詩を書こうそして
現代詩フォーラムへ投稿しよう
釣りに行くぞ
釣れても釣れなくてもいい
散歩をするぞ
山歩きに山菜取り
虫眼鏡で虫を手当たり次第に拡大して
ひとり燥いで盛り上がろう
脳内麻薬でぐっしょり濡れて
あちこち徘徊するのだ
映画を借りてこよう
新作も何度も見たお気に入りのやつも
普段見ないような思いっきりアホなやつも
眠ろう 深く ぐっすりと
昼寝に夜寝
目覚めたら記憶を失くしているほどに
ぼんやりしよう思う存分
公園のベンチや芝生で 陽射しを浴びて
風に頬を撫でられながら
埠頭で車を止めて 波のうねりに心揺蕩わせ
カモメと寡黙に語らいながら
街角のカフェで 通りを行く人々を眺め
美人番付をしながら
架空の恋を楽しみながら

時間をつぶしたりなど
ぜったいにするものか!

そうだ ついでに
金も来たらいい
ああ汝 天下の回りものよ
もう回遊しなくてもいい
わたしの懐に来て休みなさい
戸惑うな
わたしが汝に相応しい
能力や働きがあるか否かなど
一切 気にしなくても大丈夫だ
わたしは無条件で汝を受け入れる
アガペーの愛で受け入れよう
さあ流浪の民よ
汝らの約束の地
わたしの懐へ
来なさい さっさと
来るのです

時間と金があれば
鬼に金棒だ
いいやジェダイにライトセイバーだ
もしやハリー・キャラハンに44マグナムかも
あえて言うならジャコにフレットレスベースかな
えっ右翼に街宣車だって?
むしろアカ頭巾ちゃんに狼男だろう
なんて飼犬に小判だったりして
つまり馬鹿にハサミとほめ言葉ってことかしら
そりゃあ延々と裁判だわ
糠床から河童の手の木乃伊だってははは
桃色蝸牛からの招待状だってははは
おれのポケットに? お喋りなキノコ? イヒヒ
サンダンス・キッドの散弾的散文さ
明日に向ってもきっと大丈夫さ

カネはトキなり
等号では繋がらないか
氷や水と水蒸気みたいなものか
いいや単なる比喩さ
だけどやっぱりつぶさない
メチョメチョに可愛がる
目に入れても痛くないから
アンヨハジョウズニハシム二カ
お遊戯の時間おやつの時間お昼寝の時間
みんな環になって
つぶらなつぼみをこぼつなつぶすな
開花が始まれば
永久も胡蝶の如く憩うというもの
そっと抽斗を開けてご覧
時間と時間と時間が手を繋ぎ
マイムマイムと躍り出る
舞夢ベサソン
泉ワクワク



          《ツブスナカレヤ:2015年4月25日》







自由詩 ツブスナカレヤ Copyright ただのみきや 2015-05-05 13:22:21
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