「自称詩」哀れだった
花形新次

朝の半蔵門線の車内で
赤い傘を差す女性がいた
「危ないから傘を閉じなさい」
と言いながら近づこうとする
会社員風の男性に向かって
女性は
「やめてえ!触らないでえ!」と叫んで抵抗した
社内にいた他の人も
会社員風の男性に同調し
数人がかりで傘を奪おうとした
女性は興奮して
「触らないで!触らないで!」と繰り返した
私はその光景を見ていた

女性は哀れだった
本気でどうにかしようとしている
会社員風の男性もその他の人も
哀れだった

そして
地下鉄車内に降る雨
それが私に見えたなら
もっと良いものが書けるのに
と思った私は
恐らく一番哀れだった


自由詩 「自称詩」哀れだった Copyright 花形新次 2015-05-05 12:31:35
notebook Home