村祭と従妹
イナエ

祭り太鼓の音があちこちの集落から
田面に流れ出すと
こどもたちたちは宿題も魚取りもすっかり忘れて
祭半纏をはおって祭宿に駆けつけ 
出迎える獅子頭を連れ出して
集落内を練り歩く 

ぼくの家には叔母に連れられて従妹が 
冒険小説やトランプゲームなどと一緒に
街の華やかな風を運んでくる 
そして祭半纏を着た弟と
一緒に出かけていくのだ

ぼくは竈の前にたてた火箸に磔になり 
芋とか栗とか畑や山が産んだ食べ物を
釜ゆでにする 

籾殻の火は消え易い 
継ぎ足しつぎたし火をつなぐ
消えそうなとき火吹き竹で息を吹きかけ 
燃え上がらせる
すると火の中に山車が現れる 
ぼくが山車を追って走るとき

宿から帰った従妹が赤く燃えるぼくの顔を
遠くから見ていることに気が付くと
ぼくの顔はますます燃えて炎をあげる

従妹が隣に来て竈をのぞき込む
けれども慣れない従妹は煙に咽せて咳き込む 
すると 叔母は従妹を呼び戻し
街から持ってきた空気の中で
弟といっしょに遊ばせるのだ

太鼓の音も静まった夜中 従妹は
ぼくの冷たい寝床に潜り込み 
ようやく膨らみ始めた胸にぼくを入れ 
母を殺す企てをそそのかす
ぼくときたら 
二人目の母を失っては大変だと
従妹を邪険にはねのけるのだ 


自由詩 村祭と従妹 Copyright イナエ 2015-05-03 15:38:55
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