彼は屋上にいた
佐々宝砂

死ぬに死ねない冬の蜂が巣からはい出す
ふかふかと暖かな布団が空を舞う朝
木々は消えかけた希望を吸い上げ
鳥たちが絶滅の歌を歌い
落ちてきたものを受け止めかねて彼女は俯いた
遠い泥 遠い海 遠い崖
金魚の鱗にはいつもの泥
風の奥に隠されていたのはひとつの鉤


自由詩 彼は屋上にいた Copyright 佐々宝砂 2005-02-08 23:59:39
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