宝石生みの話
初谷むい



舌まできらきらひかる宝石生みの話をして。



異物混入屋さんで手をべたべたにしてポテトを食べているきみは、
三秒に一回はおいしいっていってるのに表情が全く変わりません。
異物混入屋さんで働いている私はきみのポテトにポテトの芽を入れて、
きみに新しさを埋めてあげたいとおもう。
べたべたと触る窓ガラスの欠片を、女児向け玩具に混入させてからきみのほうをみると、
やっぱりおいしいと言って芽を食べていた。
やめて、っていうだけの映画のワンシーンの停止モードのぼくは、
ほんとうのところきみに愛されているのでオールオッケー的な、
角砂糖の混入したマスクのうちがわを舐めて、睫毛を上下に揺らしていた。



関節を金銀に変えている宝石生みの話をして。



きみの背中を押している。体育と言う授業でせなかに浮き出たブラジャーの線、
べってひっぱってぺちんってしたい。
体が柔らかいこと、運動ができなくても許される免罪符を見せびらかすきみは、
そのまま床までぐるっと一周してはずかしそうにしていた。
関節がないんだって、そんなことでぼくはきみを否定出来やしないよ。
きみの生まれた星では、どんなことが流行っているのか聞きたいです。
テルミ―。
きらきらのヨーヨー、透明な油でつくった球、似たようなものならもってるし、
今度うちに遊びにおいでよって言いかけた所でぼくのブラジャーがびゅんと破裂して、
硬い関節が点滅してしまった。5、4、3、2、



きみが宝石生みだったときのはなしをして。



親愛なるAちゃん。
こないだやぶいてしまった膝から、
おおきなきれいなのができました。
体内の混入物はまだまだあるようで、傷口をぐじぐじいじると、
奥に黄色っぽいのがみえていやになります。
涙が水晶になる女の子、むかしいたけど、あなただけは、
わたしをいちばんかわいそうにおもってください。
執着と癒着、わたしたちの愛だ。


自由詩 宝石生みの話 Copyright 初谷むい 2015-05-02 18:42:49
notebook Home 戻る  過去 未来