アー・ユー・パッショネイト?
ホロウ・シカエルボク



「朝の祈りを夜まで持ち越すわけにはいかない」ときみは美しいキャンドルを叩き壊してご満悦、でもおれはそんなきみの姿にこっそり吐気をもよおしている…インディペンデントのスピリットを取り違えているきみ、そんなきみの願望はきっと偶像視されることさ―たいして高いものでもない香のかおりでスペシャルなステージに行けるときみは言う、そんなところに行けるチケットを手にしたことなんか一度もないくせに…きみが口にする希望は、純粋は、いつでもどこかいいわけがましいんだ、イレギュラーなインパクトを狙わなければきみは自己主張すら出来やしない、きみがしたいのは自己主張なんじゃないかって、ときどきおれはそんな感じを受けることがあるよ…ジャック・ダニエルの空ボトルを穴を空けたフロアーに挿して聖地だと語るきみ、ああ、だけど、その神の定義さえきみは差し出すことが出来ないじゃないか…!「ロックンロール」ときみはクールに言う、だけど、イッツオンリーって言葉をいつも忘れたままでいる、そんなの、道化に過ぎないだろ?音楽は鳴り止まない、でも、受け止めるやつの耳がザルだから、「ロックは死んだ」なんて言葉が、いつまでも流行り続ける―ロックが死んだってことはエモーションが死んだってことだぜ、判んないのかい?きみはピッチを合わせることに夢中になりすぎなんだ、出来合いのものに寄り添っていくだけなんだよ、アヴァンギャルドという定番に自分をはめこもうとしているだけなのさ…先に決まっているかたちなんかない、そいつが生まれたときのことを考えてみればいい、音楽が生まれたのは楽譜が生まれるよりずっと前のことだぜ―70年のキングス・ロードで売ってたみたいな服を着て、辞書捲りまくって作ったイングリッシュで、きみのスピリットはするすると出てくるって言うのかい…?おれはストーンズが好きだけど、ミック・ジャガーみたいな服なんか別に買ったことないぜ、そんなの本当に馬鹿げてるって思うだけさ―ヘイヨー、きみはパッショネイティブだ、だけどそれはどこかで見たことがある、ヘイヨー、きみはアヴァンギャルドだ、もしもそれを初めて着たのがきみならね…作法じゃない、スタイルの踏襲じゃない、スタイルへの裏切りでもない、選択するものなんかなんだっていい、ようは、自分に差し出すなにかがあるかってことだけさ、目の前のテーブルに並べるカードを持ってるのかって、それだけのことさ…ねえきみ、みんなに伝わるなんて甘いこと考えちゃダメだよ、言葉なんて絶対に思った通りには伝わらないものなんだ、言葉に齧りついて、とことんまで味わってくれるやつしか、真意なんて汲み取ってはくれないものなのさ、それだって全部じゃない、それは当り前のことなんだ、そんなことに駄々をこねてる暇があるのなら新しいなにかを作ることさ、ひとつでは判らないことも、ふたつあれば判るかもしれないだろう、きみはそういうことについてあまりにも考えが足りなさ過ぎるんだ、いいかい、もしも、信念とか、スタイルとか、スタンスとかでなにかを伝えられると思ってんなら、自分の頭を殴りつけてすべてをドブに捨てることだ、そんなものきみが相手にしてる連中にとってはどんな意味も持ちはしない、たとえばきみがだらしない格好でテレビを見ながら作ったものでも、美味そうに見えたら誰かが飛びついてくれるのさ、姿勢なんかいくらアピールしたってなんの意味もないことさ、「シー・ラブズ・ユー」って3分足らずで書かれた曲だぜ―オーケイ、オーケイ、オーケイ!きみの朝の祈りだってもちろんきみにとっちゃ大切なことだ、夜にそれをぶち壊すこともね…だけどそんなのおれにしてみりゃ、だからなんなんだって話に過ぎないんだよ、おれが見たいのはそんなものじゃない、その祈りがきみになにをもたらしてるのかって、そんなものが見たいのさ…行くべき場所に行って、語るべきことを語って、うたうべき歌をうたって―そういうことがきみに出来るのかっておれは質問してるんだ、この世にあるすべての芸術で、お稽古事みたいに身につけられることなんかひとつもないんだぜ、影響を変換することが必要なんだ、大事なことはそいつさ、受け取ったものを、自分のやり方で差し出せるのか…そいつ以外に重要なことなんてほとんどないんだ。



自由詩 アー・ユー・パッショネイト? Copyright ホロウ・シカエルボク 2015-04-25 22:51:38
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