君の背中を見送る10首
竹森

光速を超える速度を見つけたよ君の背中を見送る夕べ

停電の夜のベランダきみがまた海を見たいと言ってくれたら

人は海から産まれないよ。もう夜だ、立ってても誰も上がって来ないよ。

引っ越すの。これが最後の引っ越しになると思うわ。ええ、病室よ。

人は列を成しどこまでも引く波を追い見届けた海の枯渇を

人はみな去らねばならぬ大樹より一葉(ひとよ)緑葉(みどりば)手折り萎らせ

さようなら 君と僕との鶏卵の最後の一つをゆで卵に

追うよりも鶏卵一個あたたかな椅子に供えて終えた初恋

涼しさで影を捉える盲目の君が桜を鼻先に待つ

懐かしい名字が並ぶ住宅地ここで新生活が始まる


短歌 君の背中を見送る10首 Copyright 竹森 2015-04-22 22:29:06
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