散桜
とよよん

目の痒み 天に蔓延(はびこ)る春霞

イヤイヤ 踊り
ヒソヒソ 話し
ハラハラ 散るらむ

花びらたちは地面に広がり、お喋りを始めている。人間達にジロジロ見られるのも、愛想笑いをするのも、疲れるったらありゃしないわよね。話題といえば、そのようなところである。昨日の雨のせいで、お尻が地面にべったり貼り付いていて、そうそう簡単には動きそうにない気配だ。

モリアオガエルの
くみーるに聞いてみたい。
冬眠が、終わるころ、お尻、ムズムズするのか。

の、気配で。

桜の葉を食べて育つ毛虫は、食べると桜の香りがするらしい。くみーるは食べただろうか。ところで桜餅を葉ごと食べた私からも、桜の香りがするだろうか。


散りゆけば
うすもも色の鱗が
漆黒に散らばる、夜。
花びらの群れは、北へ、北へ。
山へ、山へ。桜の木には新緑の灯火
毛虫たちは春に微睡む。夢のなかでまだ浅い夏の温度にむせる。桜の葉は星を泳ぐ。


自由詩 散桜 Copyright とよよん 2015-04-12 10:13:25
notebook Home 戻る  過去 未来