まことしやかな嘘
藤原絵理子
嘘をついているつもりじゃない
都合のいい部分だけを繋ぎ合わせたら
彼女の話になる 騙すつもりじゃないのに
暖かくて居心地のいい 四角い部屋
田舎の家に帰りたい
思いは増殖して 連鎖反応を起こす
「早く帰っておいでよ」 携帯の向こう
無責任な知り合いの一言で 脳がメルトダウンする
夢を見ていた 夜半の月は
そよとも吹かぬ風に しん と霞んだ
鏡になった池のおもてに 散り落ちる花
眠れない夜 カーテン越しに 洩れ入る
薬が投げる かすかな波紋は すべもなく闇に
悲しい恋の行方を 見届ける