16月生まれのぼくらは
オダカズヒコ



どうせ天使にゃなれねぇ
かといって羊のように
柵の中でおとなしく暮らせもしねぇ
都会のマンホールの蓋をあける
そっとつま先を伸ばす
南米の空の上の
銀河の星の一つに
ビーチサンダルを引っかけちまう

赤ん坊を産むなら
田んぼへお行き
畑へお行き
浜辺へお行き
墓地へお行き
戦場へお行き
畝と畝の間で
シロナガスクジラの母さんが
赤い目でのゥ・のゥ言っている
赤ん坊に宿す魂を探すため
勇敢な男たちが
その昔王国のあった場所で会議をひらく
ビルディングの一番上
自我を開き意志を込める
意志を諦め自我を閉じる
魂に必要なものは慄きでも自由でもない
男たちは知っていた
赤ん坊に宿る魂はここにはない

居眠りを始めた男が見た夢は
昔王国があった場所で
文盲の男たちが会議をひらいているところ
ネクタイをゆるめ
額の汗をハンカチで拭う
眼鏡を押し上げ
ババを引かないよう目を伏せること
やっぱりここには
赤ん坊の魂なんてない

甘いブレーキ
繋ぎ止めたいタッチ
黙ってやってくんの愛
やせ細った幽霊に
赤い血が流れてる悲しみ
黙ってくんの愛
流れてって血
墓地に埋めた幽霊
服脱がして女とパラダイス
繋ぎとめたって愛

一度だけ世界と人間の質量が同じだったとき
そのバカみたいなバランスに凭れ掛かって
ぼくらは朝焼けの国道に寝っころがり
恋人とキスをした
軽く永遠を誓い
一度に10万頭のゾウを殺せるくらいの力で抱き合い
ゆっくりと背中を起こす
妊娠している女のお腹の中でみるみると太陽が膨らんでいく
背中で苦しみが染みのように広がってく

黙ってくんの愛
繋ぎとめたって愛


自由詩 16月生まれのぼくらは Copyright オダカズヒコ 2015-04-05 21:28:28
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