花の色は
藤原絵理子

命日には 花が咲き始める
あの時のまま 時間は止まっている
部屋は汚れ果てた 誰も来なくなったから
すべてが汚らしく見えて 手ばかり洗っている


不安の海は時化て 人魚は深い水底へ
押し寄せる波は 迫り上がり 崩れて
どろりとした暗黒へ 引きずり込もうとする
薬を探そうとして 塵の海を泳ぐ


見られたくないのよ 老いさらばえて
当たり前の事もできなくなった みっともない姿を
残された たったひとつの矜持 ただの見栄っぱり


明日は散歩に出て 忘れてしまおう
杖を持たずに 痛む脚を我慢して
満開の花に霞んで 昔見た風景に埋もれて


自由詩 花の色は Copyright 藤原絵理子 2015-04-03 21:19:17
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