虹が丘のひみつ(続 チョコチップクッキーは大切なお友達に)
とよよん

(虹が丘はなんで虹なんだろう?
(おじいちゃんに聞いてみなくっちゃ

今日も虹が丘に行くよ
ちいちゃんと早く遊びたい

そしてあの
キラキラ虹のように光って
なめると夢のように甘くて
お空に飛んでいきたくなる

ちいちゃんのお砂糖をわけてもらいに

今日は、明日のシュガートースト用のをもらいにいくの。
朝食べる ちいちゃんのお砂糖の乗った キラキラ光るトーストは
クリームたっぷりのケーキより ずっとおいしいんだから

虹が丘ではちいちゃんが、ぽんぽんはずんでいました。
うららかな春の光のなかで

そしてあたり一面、おおいぬのふぐりが
さわさわ一斉に揺れていた

ハイハイでやっと通れるくらいの 木の穴をくぐると
ちいちゃんの秘密きち

ミカは虹の粉をおねだり。大きな瓶をとりだして

ちいちゃんは、くまのおおきなぬいぐるみのはなにとまると、
うごきはじめ、へやのおくから銀色の缶をもってきました。
中身は虹色の粉。

「ちいちゃん、スプーンかして。すくってビンに入れたいから。」

くまは棚の方へ向かおうとしました。そのとき

「ねえ、ちいちゃん、この虹色のお砂糖、とてもおいしいでしょ。これはどうやって作ったの?」

くまのけむくじゃらの足がとまりました。

「どうしても、知りたい?」

ちいちゃんがミカの頭のなかに直接、話しかけてきます。

「うん。だってこんなにおいしいんだもの。この前のチョコチップクッキー、とってもおいしかったもの。かんなちゃんが、どうやって作ったの、材料はって聞いてきたから、虹色のお砂糖がポイントなんだって教えたら、それはどうやって作るのって聞かれたの。」

くまはぼんやりと天井の方を見つめていましたが、なにかをきめたように歩き出しました。

「ついてきて」

ちいちゃんの部屋の奥に行くと、真っ暗な通路がありました。
くまはランプを持ってそこを進んでいき、ミカはくまの毛のはしっこをつかんでおどおどしながら一緒に歩いていきました。

とちゅう、頭がぐわんぐわんしましたが、暗いトンネルのような通路をどんどん進むと、やがて前の方にまぶしい光が見えてきました。それはどんどん明るくなり、とても明るい池のようなところへ出ました。その光景は一瞬、おおいぬのふぐりで覆われた、さっきの虹が丘と重なりました。

ただ違うのは、おびただしい量の 灰色の魚が横たわっていたことでした。
そして魚たちは、虹色に輝く液体にひたひたとつかっていました。
よく見ると、それぞれの魚には小さな穴が開いていて、どうやら虹色の液体は魚から少しずつにじみ出しているようでした。それがまぶしい七色の池のようになっていたのです。
そして岸辺で結晶になっているそれは、ちいちゃんの銀の缶に入っている虹色の砂糖そっくりでした。

──ちいちゃんのお砂糖は、
──お魚の……血?

横たわった魚はみんな同じようにヒレをたて、ひくつかせていました。
それはまるで虹が丘のおおいぬのふぐりが春風になでられて、
いっせいに ゆれているかのような光景でした。

ひくつきはどうやら、命のさいごを知らせる しるしかもしれないと
ミカがはっとすると、くまがこちらをじっと見ています。

くまがなにか言っているような
ちいちゃんがなにかをつたえようとしていたようですが
もうミカの頭のなかにはなにも響いてきませんでした

──ちいちゃんのお砂糖は
──お魚の命

くまはミカをじっと見つめています。ミカもじっと見つめ返しました。あれれ、くまのプラスチックの瞳のなかにミカが映っています。そしてそのミカの瞳のなかにくまがうつっています。そしてくまの瞳のなかにはミカが、そしてミカの瞳のなかにはくまが……。

「ちいちゃんがさよならって言ってるよ」

誰の声かしら
魚のヒレがバイバイしているように見えて……。



春風に頬をなでられて、ミカははっと目が覚めました。
目の前にはすいこまれて 落ちていきそうな青い空
どうやら外で横たわっているようです。
体を起こしてあたりを見まわすと、そこは丘でした。
おおいぬのふぐりがたくさん咲いて、かぜにそよそよ揺れています。

あれ、ここはどこだったかしら。

思い出せません。なぜここに寝そべっていたのかも。
少し考えているとどこからかいい香りが漂ってきました。
これは……じんちょうげのかおり。

そうだ、ここはじんちょうげの丘だった。
私は……何をしにきていたのかな。



とある報告書にはこう書かれていました。

「われわれ探査隊は、ある惑星に虹色に光る体液を持つ生物を発見し、その成分はわれわれを一種の恍惚状態に導くことを発見した。そしてその魚たちはその惑星に繁殖する知能生命体がエレキテルを使い始めるようになるあたりに多く発生していたので、その時代へ行き、その魚の液体の採取をほぼ完了した。」


ミカの家の古い地図。もう何代も前の
おじいちゃんがかいたとか。
その茶色い地図にはじんちょうげの丘に「にじがおか」という文字が残っていました。


自由詩 虹が丘のひみつ(続 チョコチップクッキーは大切なお友達に) Copyright とよよん 2015-04-01 21:22:10
notebook Home 戻る  過去 未来