夜行
為平 澪

闇色のコートの肩に刺さる
いくつもの銀糸の雨を
拭ってあげることもできないままで
私は冷たい夜を行く

棘のある視線を伏せて
唇だけを動かして見せたけど
今さら何を伝えたかったのだろう

何者にもなれない 不透明で無機質の私が
腐らせ萎れさせた 紅い花

闇色のコートが濡れているうちに
ひらいた唇を押し当てたなら
なにか、を 咲かせられただろうか

戸惑いが瓦礫のように降り積もる夕暮れ
アパート窓辺には  
無言の夜に苛まれた 唇と薔薇が
闇に したたる


自由詩 夜行 Copyright 為平 澪 2015-04-01 20:56:24
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