長靴をはいて猫
やまうちあつし
雨上がりだから
道がぬかるんでいるだろう
長靴を履いて外に出た
商店街を歩いていると
なんだかクスクス
視線が痛い
美容室のガラスに映してみると
長靴をはいた猫
これは一体
どういうことにゃ
とりみだすわたくし
とりあえず
にゃーでも飲んで落ち着こうと
喫茶店に入るけれども
どうしても
またたびを注文してしまう
ございません、と
ニタニタ笑う店員を
バカにするにゃ、と殴りつけるも
ぽん、と肉球が頬を打つだけ
帰宅して相談しようと走り出す
家に着くなり長靴を脱ぎ捨てて
ピアにしも着地する
「あら、タマ。おかえり」と妻
ニャにおう、と
その膝の上へ