葉leaf




正午とは絶対的な停止の時刻だ
全てのものは太陽の鑿に彫刻されるため
輪郭を顕わにしてじっと耐えねばならぬ
痛みもまた停止して焼き付けられ
まぶしい空は地上を忌避し続ける

昼は機械の時刻
機械は壊れるまで昼を継続するひとつの構造だから
昼は有機的で湿っていてはならない
無機物の乾いた論理に貫かれているのが
昼という機械仕掛けの風景だ

昼は慟哭の時刻
空気が光で密になり人は理由もなく泣いてしまう
すべてが極まろうと勢いを増していくのでますます涙が止まらない
悲しさも嬉しさも何もなく
昼は日陰で目立たなかった大きな外傷を直撃するのである

昼は狂気の時刻
人は急激なめまいに襲われ
意味不明な疲労で足が動かなくなる
太陽の哄笑が辺り一面に飛び散っていき
忍び込む熱が人々の関係を切り刻む
人は社会からも人間からも離脱して
熱病のさ中で人格を遺失する

正午とは絶対的な禁止の時刻だ
すべてのものは生きることを禁止され
生と死とのあわいで再び生と死とを選び直す
まぶしい空は人々を試し続ける
日に一度めぐってくる審判の時刻だ


自由詩Copyright 葉leaf 2015-03-29 03:40:03
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