わかりやすい詩
高濱
概念、
私からつねに対極にはばたくものよ。
しかし私は、
あの斥力に呪われた手筈がないならば、
ひとときとして、
存続することは叶わないだろう。
思考をすることが悪であるとは限らない。
尤も、思考に耐え得るほどに精神をみとどめるのは、
依然としてそこにある物象の愉悦を、過ぎ去るものとして手放す程に難しい。
私は、投薬によって抑制されてはいるが、
放縦な美しさと謂うものが実存をするなら、それを庇護する。
社会の敵として。
私たちを
敬虔且つ科学的な成果である以前に、
ひとりの存在として観留めてもらいたい。
私が私であると言う自明は、
戸籍謄本の
氏名記入欄にしか、保障されないのであるからには。
死に到る程に、
なにものかを美しいと形容することは、代償を必要とするものだ。
口にのぼらせてはいけない感情、それこそが流麗な柩。
私は私自身の血を飲むことでしか、
ひと時でさえも血の通った詩を繋ぎとめておくことができない。
例えこの夜が灼け落ちても、
その向うには運命では語りおおせないような真実の虚脱があり、
私はそれを眺めるためにやってきたのさ。