わかりやすい詩
高濱

概念、
私からつねに対極にはばたくものよ。
しかし私は、
あの斥力に呪われた手筈がないならば、
ひとときとして、
存続することは叶わないだろう。

思考をすることが悪であるとは限らない。

尤も、思考に耐え得るほどに精神をみとどめるのは、
依然としてそこにある物象の愉悦を、過ぎ去るものとして手放す程に難しい。

私は、投薬によって抑制されてはいるが、
放縦な美しさと謂うものが実存をするなら、それを庇護する。
社会の敵として。

私たちを
敬虔且つ科学的な成果である以前に、
ひとりの存在として観留めてもらいたい。
私が私であると言う自明は、
戸籍謄本の
氏名記入欄にしか、保障されないのであるからには。

死に到る程に、
なにものかを美しいと形容することは、代償を必要とするものだ。

口にのぼらせてはいけない感情、それこそが流麗な柩。

私は私自身の血を飲むことでしか、
ひと時でさえも血の通った詩を繋ぎとめておくことができない。

例えこの夜が灼け落ちても、
その向うには運命では語りおおせないような真実の虚脱があり、
私はそれを眺めるためにやってきたのさ。


自由詩 わかりやすい詩 Copyright 高濱 2015-03-25 00:06:16
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