HONTOU
やまうちあつし

「おかーたん、
 やねのうえのねこたんは
 こんなじかんになにをないてるの?」
「黒猫はね、
 本当のことを知っているのよ。」
「ほんとうのことって、なあに?」
「それはね、
 私たちにはわからないこと。
 私たちが知ってしまったら、
 とても耐えられない類の
 ほんとうの、本当のこと。」
「それがわかったら、どうちよう。
 ねこたんが、しゃべっちゃったら?」
「大丈夫よ。
 だから神様は、
 黒猫から言葉を奪ったの。
 それでも猫は、本当のことを
 皆に知らしめようとして
 こんな時間に、屋根の上で、
 あんなふうにして鳴いているのよ。」


自由詩 HONTOU Copyright やまうちあつし 2015-03-22 12:52:18
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