悲しみ
葉leaf




一人の人間の中には収まらない
大きな悲しみがある
あるいは地球の地表を覆い
あるいは宇宙をすべて満たす
大きな悲しみがある
だがこの悲しみは
僕という一人の人間から生まれたのだ
例えば愛が伝わらなかった悲しみ
例えば他人の不幸に触れた悲しみ
例えば天災で荒れた自然を見た悲しみ
僕は日々生きていく過程で
小さな悲しみをいくつも宇宙に登録した
この小さな悲しみがこんな春の日差しによって
温かく明るい春の日差しによって
急に増殖し連合し世界中を覆ってしまった
僕は宇宙をすべて満たす悲しみの一端に刺し貫かれて
標本の蝶のように身動きが取れない
だが僕はもはや悲しくないのだ
悲しみは宇宙がすべて引き受けてしまった
僕の小さな悲しみは巨大化して
僕の甘美な感傷から永遠に逃げてしまった
春の日差しの温かさが僕の空隙に痛くて
僕にはもはや冷たい痛みしか残されていない


自由詩 悲しみ Copyright 葉leaf 2015-03-22 07:36:59
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