詩 二篇
月形半分子

送別会と反省会と忘年会


自分の名前を忘れてしまったと桜がつぶやく夜
街灯のしたを風が低く吹き抜けていく
落とし物のように。
花を忘れてしまったとつぶやいている女が
そこにたっていた。
星がまたたくのは、なぜだろう。
星なんて暖かかったことなんていちどもない
なのに、星の王子様がいそうなのは、なぜ。

(おめでとう
主役になれないことが素敵な夜)
女の低いつぶやきが風にちぎれていく。

性善説を唱える街の灯
無口になった時計
ワインは革命前夜を恋しがるが
ニュースはもう花束にも、聖火にもなれない 

わたしが会を重ねるたびに
不謹慎になっていく笑い



自然の摂理

信号待ちの間に思考が粒子になる
粒子が法則という形の螺旋になる
螺旋が二千年前の空へと向かう
二千年の姿の空が私だ
私が信号待ちをしている間に……

こんな白昼夢を見るのは
ヘッセのせいかしら
ヘッセが銀杏の木のように
二千年の夢の中にたっている
二千年の美の中にたっている

詩人を愛する度に
約束が枝に帰っていく
枯れるために

















自由詩 詩 二篇 Copyright 月形半分子 2015-03-19 21:52:21
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